「ととのう」という感覚を求めてー5年ぶりの日本:サウナ道ー Sensation of “Totonou” in Sauna

日本に五年ぶりに二週間近く帰ることになった。日本の運転免許証は海外に住んでいるなど、理由がある場合は、失効してから三年以内であれば、二時間の講義を受講すれば、再取得が可能であり、その期限が令和二年一月十五日だったため、どうしても帰る必要があった。ロンドンで起業(単に自営業者になっただけ)での運転資金をねだりに実家の家族に相談し、また日本国内のインターネットバンキングで海外送金できるように設定するすることが目的であった。
この日本への一時帰国は家族帯同ではなく、私一人だったので、大変身軽に行動ができるはずだった。そのため私がこの間、やりたいことのTo Do list は五十のタクスを超えていた。
日本の情報はYoutube 以外ではほとんど入手いていないが、私はオリエンタルラジオの「中田敦彦You tube 大学」の熱心なサブスクライバーであり、歴史、文学、哲学、経済などの情報はほとんどそこから入手しているのだが、その数あるエピソードの中でもっとも影響をうけたのは実は中田敦彦氏本人ではなく、ゲスト回である、相方の藤森慎吾氏が出演したときであった。
その時の講義はサウナ道、つまりサウナの入り方であった。藤森氏がいうには、
サウナー> 水風呂ー>ベンチでぼーっとする
と、いうルーティンを繰り返すと、「ととのう」という別世界の大変気持ちいい感覚をサウナで味わえるということだった。
水風呂は冷たすぎて、入ったことはなかったが、水風呂を入った後、五秒ほど我慢すると、体と水風呂の間に暖かい膜ができ、冷たい感覚がなくなるとのことだった。
成田エクスプレスで新宿まで来て、いきなりステーキを立ち喰って、バスタ新宿で富山高岡への深夜バスに乗ろうとしていた。深夜、高速バスの値段競争がはじまっており、値段は五年前の半額以下になっていたが、このバスタ新宿というバスターミナルが、オリンピック前の北京駅のように人でごった返しており、ベンチに座れない人もいて、とても洗練された都東京とは思えない。バスの車内ではアルコールが飲めないということがわかり、コンビニで、ストロングゼロといわれる、アルコール9%の大変体に悪いとされ、流行りの飲み物をバスが来る前に飲んだ。美味くはない。
話は横道に逸れるが、今回の日本帰国で、うまかったお酒は、新宿の鰻屋で飲んだ獺祭と、牛角のグレープフルーツサワーと、新宿西口ビックカメラの二階でお酒を試飲できるブースで飲んだアードベックぐらいで、基本的にはお酒はロンドンのパブのほうが圧倒的に美味くて安い。是非お酒好きはロンドンに来てください。(ただ上記の三つに関しては、ものすごく美味い酒でした。)
話は戻って、実家の富山、高岡に帰って二日目に小学校からの友達にあった。彼は四人も子供がいるので、長女はすでに社会人2年目なので、毎回お土産はなんにするか悩みどころであった。今回は英語版モノポリーと、中田敦彦氏が作ったカードゲームZENOを持って行って、みんなでガチで熱中して遊んだ。テレビゲームでななくてもカードもボードも基本的には面白い!
その晩である、高岡の江尻にある「陽だまりの湯」というスーパー銭湯に行く機会を友人の嫁さんが作ってくれた。入浴料は六百五十円。
友人は仕事だったので、彼の高校生になる次男と一緒に入浴した。
まず風呂でもシャワーでもいいが、サウナに入る前のコツとしては、水を飲む事、そして体の水分をできるだけ拭くことである。そうすると汗がかきやすい。友人の次男も私がオリラジの藤森氏の話を熱心に吹聴したので、サウナに付き合ってくれた。
日本のサウナはテレビがあるので、結構長く入れる。その時はなんか売りあげのよくない、ボクシングチャンピョンをテーマにした飲み屋を十万円で改装しようというようなテレビ番組で、テレビを集中して見たいが、サウナにはせいぜい十二分を超えると限界にくるので、肝心な時にテレビの続きが見れなくなる。サウナの入室時間は人によってまちまちで、基本的には六分からながくても十二分程度とされているが、ようは汗がでてきて、もう無理と思ったら、出た方がよい。
出た後は、流し水で体を流して、水風呂に入る。今回日本にいる間、五回ほど、サウナに行ったがサウナの温度は九十度で、水風呂は十八度から低いものでは十四度のものがあった。
水風呂の入浴時間は三分程度だが、ようは最初の五秒のヒヤッっとする感覚を超えて、お湯の膜が体を覆って来て、すこし落ち着いたなという時に上がる。私の場合は、だいたい三分程度だったと思う。その後、水を飲んでベンチでぼーとする。その日はこのルーティーンを五回ほど繰り返した。気持ちは大変良かったが、「ととのう」という感覚になることはなかった。友人の次男も水風呂には慣れたようだったが、ととのったわけではなかったように思える。
その後、東京に行く前日に、母と姉とでもう一度「陽だまりの湯」に行く機会があったので、再度そのルーティーンを三回した。しかし境地には達しなかったので、私の肉体は「とののう」事はないのだと完全に諦めていた。
嫁(イギリス人)の弟が東京で英語を教えているので、巣鴨で会った。大学の時は池袋に住んでいたが、巣鴨駅に降りたことはなかった。刺抜き地蔵、商店街、居酒屋、庶民的な街で、愛着がもてる。
弟とガストで飯をくって、ポケモンGOのレイドを二回やって、その後彼のアパートを見学した。その日は日曜日だったが、次の日の小学校の授業が朝から早いというので、彼は私にそのあたりのスーパー銭湯「さくら 染井温泉」がこの辺りでは一番のお風呂だというので、紹介してもらった。道に迷った。巣鴨は墓地ばっかりなので、お化けでもでそうだった。ソメイヨシノと関係のあるこのあたりの温泉は、入浴料が千七百円ぐらいはしたと思うが、それはやはり東京、富山とは物価が違う。大変人気で入浴者がたくさんいた。東京の銭湯というと、火傷しそうなアツアツのお湯というイメージがあるが、そこは四十度から四十三度で大変ここちがよかった。牛乳のような白濁したお風呂があったが、これは人工的に泡を含ませているだけだそうだ。
中国人の観光客なのか、住んでいるのか、そんな人たちもいた。こんな経済的には落ち目な国ではあるが、お金を落として行ってくれるのは大変ありがたいことだと思った。もっとお風呂にでも、飯でも食ってください。
ただ私の目的はもちろん風呂ではなかった。その日は東京に帰って二日目、前日は池袋の漫画喫茶でジョジョの四部を読んでいたので、あんまりちゃんと寝ていなかったせいもあるかもしれない。サウナに入って、水風呂に入って、露天風呂近くのベンチでボーとしていた三回目のルーティンの時である。突然だった。
来た。きた、来た、キターア!
「ととのう」感覚が体に下りて来たのだ。別に気を失うというわけではないが、「ととのう」寸前の感覚は、若干気を失うような感覚が一瞬あったが、その後は大変体が、そして脳が満ちた足りた感覚に浸っていった。
その夜は、巣鴨駅前のカプセルホテルに止まった。そこにもサウナがついていた。時差ボケのため、朝四時ぐらいに起床。そこから東大赤門までジョギングして、吉野家で朝食を食べてから、サウナに入った。一回のルーティンで「とののう」ようになっていた。体が「ととのう」事を覚えたのだった。
ロンドンに先週から帰って来た。日本が恋しい。ロンドンでもサウナに行ってみたくなった。ただロンドン、サウナでググると「ゲイサウナ」と出てきて、大変敷居の高いものであることがわかった。プール付きのスポーツジムにはサウナもあるが、九十度ぐらいの高音の設定ではなかったように思える。しかしながら年末年始はドイツにいくので、その時は郊外の健康センターでまたサウナを楽しめる。それまではお酒も抜いて、事業、そして資産運用を頑張りたいと思う。また近いうちに本場のフィンランドでサウナに入って、川か池に飛び込むってあれもやってみたい。