英国での賃貸不動産営業のすすめ① クライテリアを見極める Rental property in UK(1) Identify criteria

英国で賃貸不動産の営業になって、十年が経ちます。私はもとも北京で文科省の推薦奨学生として映画学を勉強し、修士も卒業して将来は映画研究か批評でもできればと考えていました。そんなわけで体育会でもなければ、コミュニケーションを英語でも日本語でとるのも、得意ではなく、もともと営業マンではありませんでした。実践を通じて経験をつみ、昨年度はトップの営業マンになりました。後天的に営業マンになったわけです。
英国での賃貸不動産の営業のノウハウ、心構えを伝えればと思います。長くなると思いますので、章立てで何回かのブログに分けます。英国の賃貸での営業が独特なものとは、思えません。他の分野の営業であっても共通点、勉強になる点は沢山あると思います。
自然に営業成績を上げらる人は、大変すごいですし、うらやましいです。天才的な営業員はやはりいます。しかしながら凡人には天才のやり方をまねるのは難しいと思います。私は凡人ですので、凡人の営業員の成績が上がらない理由はわかります。凡人だからこそ分かる営業のノウハウを伝えればと思います。天才はこれから私が述べるようなことを自然に理解できるのかと思いますが、説明はできないと思いますので。今回の章は賃貸不動産営業の基本と、お客の基準となっているクライテリアをいかに正確に判断するかという事について執筆します。
目次
- 賃貸不動産営業の基本:不動産の営業とは品ぞろえの悪い喫茶店のようなもの
- お客様のクライテリア(判断基準)
- 大家さんのクライテリア
- テナントのクライテリア
- 大家とテナントの条件のマッチング
賃貸不動産営業の基本:不動産の営業とは品ぞろえの悪い喫茶店のようなもの
普通スターバックスコヒーにいって、注文しようとすると自分の欲しい飲み物が出てきますよね。それはスターバックスにそのお客様がいらしていることで、スターバックスで手に入る、キャラメルフラペチーノ的な飲みものがある事をすでに知っていて、ご提供できるわけです。
不動産屋は違います。お客様はお住まいになりたいもののイメージが何かあります。頭に描いているファンタジーのフラペチーノです。しかしながら、様々な理由で不動産屋はそれを提供できません。その特定のエリアには、そんなご希望と同じものがなかったり、それはお客様の想像上のものであって現実とは一致しないわけです。例えば値段が高すぎる、そのエリアには駐車場付きのものがない。家具なしのものがない。お客様の法人契約の内容が、この大家の契約形態と合わない等、様々な理由があげられます。ではこのような問題をいかにして解決していくか方法論を考えます。
お客様のクライテリア(判断基準)
お客様は二種類があります。一つは不動産を貸したい大家さんです。もう一つはお住まいを借りたいテナント様です。この二つのお客様の判断基準を正確にいかにつかめるかが大変大事です。これにはメールでの、電話での、そして対面でのコミュニケーションで営業マンが判断する必要があります。つまりなにがこの人は必要んだろうとお客様に感情移入をしてみて、考えてみることです。
大家さんのクライテリア
大家さんはどのような方をテナント様として期待されているかのクライテリア(判断基準)を知る必要があります。具体的には下記のようなクライテリアがあげられます。
· 家族構成(人数)
· 家長の仕事
· テナント様の最低額の収入
· 地方自治体からお家賃補助(Housing benefit)を貰っていない
· 個人契約のみ(法人契約はではない)
· 契約が二年まで。二年後に自分が戻ってきて住む予定
· 契約が一年ごとのみ。一年後に住まいを売りたい
· 住宅ローンがあり、すぐにでもテナント様がほしい
· 犬、猫を飼っていない
· タバコを吸わない
このような事は普段から大家とメール、または電話でコミュニケーションをとっていないとわかりません。例えば大家はお家賃が月2000ポンドは支払われるかたを希望されており、実際にはテナント様が4週間も決まらない状態が続いているとします。そして良いお客様がいますが、ご予算が1900ポンドしかなかったとします。それでも大家は2000ポンド以上がお家賃の希望されているので、こちらのお住まいをご紹介しなかったとします。実は大家は住宅ローンの支払いで苦しんでおり、1900ポンドしか払えなくてもすぐにご入居されるのであれば、契約が合意に至る可能性があったとします。
住宅ローンの問題は大変深刻です。集合住宅のお住まいだとペット可になるのは難しいですが、ハウスであればもともとペット不可といっていた大家もしばらくお住まいが空いてしまうと、気が変わる場合があります。(よくありますよ、本当に)大家もテナントも状況は常に変わりやすく、クライテリアも時間の経過により変わります。そのため常にできる限り多くコミュニケーションをとる必要があります。
テナントのクライテリア
お客様のクライテリアの判断は通常メールが最初のコミュニケーションになると思います。それは会社のポータルからくる場合もありますし、自分でメールをする必要もあると思います。
下記メールの例文です。
●×様 私●×△不動産の●×と申します。よろしくお願い申し上げます。お住まいのご紹介にあたり、●×様のご希望されるお住まいの条件を伺えれば幸いです。
- お家賃の上限ご希望のエリア家具付き、家具なしのご希望
- ペットの有無
- ご入居希望日
- 駐車場の必要(専用駐車場は何台分必要でしょうか。路上駐車でもうよろしいでしょうか。)
- ご家族構成(お子様がいらっしゃるようであれば、生年月日、及びご希望の学校、公立、インタナショナルスクール、私立、日本人学校等、お決まりであれば伺えれば幸いです。)
- 奥様の車の運転の有無
- その他のご要望希望
- 希望の内覧日
ご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。何卒よろしくお願い申し上げます。 ●山 ●男 テナント様、お客様から上記の詳細について返答があると思います。それから熟考してお住まいを内覧前日までにアレンジします。
そしてここが大事なのですが、例えば当日お住まい探しにオフィスにいらしたら、もう一度条件を再確認します。というのもメールでのクライテリアとすでに変わっている可能性がありえます。それは例えば他の不動産さんからすでにお住まいを見て、ご予算を上げたくなった、入居日はもっと実際は遅くてもかまわなかった。学校が公立ではなく、私立になったので住みたい場所が変わった。間取りが小さくてもやはりマンションタイプのほうがよいように考えが変わった。上記のようなことが現場ではよくありえます。そのため下準備は大事ですが、その場で予定をすぐに変更できるようなフレキシブルさが必要です。
大家とテナントの条件のマッチング
現在自社がもっている物件とお客様の条件を頭で把握しておく必要があります。テナント様のクライテリアと物件を全部把握するのは難しいのでどちらかというと物件を把握しておくほうが大事です。これは物件の状態、家具の状態、大家がどのくらいまで交渉に応じるかなどの事です。その物件の近くの公立の学校の状況、幼稚園の状況などもわかるとなお良いです。そして例えば今週の予定にA,B,Cとうお客様がいらしたら、A,B,Cのお客様に合う条件のお住まいがぱっと浮かぶようにする必要があると思います。基本的にはこのマッチングの能力が不動産賃貸営業の基本になります。
下記のウェブサイトも日本の不動産営業向けてですが、参考になります。
https://type.jp/tensyoku-knowhow/ready/catalog/estate-sales/
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@ejijyo