私がグナーになった訳:

 イングランドのサッカーがもともと好きだったわけではない。実家の母はなかなか熱心に欧州サッカーをテレビで見ていたが、私はせいぜいJリーグやワールドカップでの日本代表の試合の試合を見る程度だった。英国に来て10年が経つが私がグナー、アーセナルファンになった理由を今回は書きたい。

a

不動産屋に当時は5年ほど勤めていたが、そこをやめて一時的にロンドンの商社の総務部で働いていたことがある。その商社はオフィスの移転等があり、一時的に不動産出身の人でが必要だった。

 総務部だったので、不動産以外にもいろんな仕事をした。稟議書の確認、社有車の取得、売却、オフィスのコヒーマシーン、エレベーターの点検の手配、オペラハウスの社債の取得、ゴルフ場の手配等。その中でも私が力を注いだのは、当時取得したばかりだったアーセナルスタジアムのプライベートボックスの社内利用マニュアルの作成とその運用だった。サッカーはまあまあ好きであったし、当時強くなってきたマンチェスターシティはなかなかのお気に入りのチームではあった。プライベートボックスとはお客様を12人程よんで、試合前に飲み食いして、その後ボックスの前が観戦席になっている、豪華な観覧室である。その商社は3年契約で取得したスタジアムのプライベートボックスを取得し、まだそのボックスにはなにもない状態だったので、机、椅子の配置などもアレンジする必要があった。

 b

 アーセナルのホーム戦すべての観戦ができたので、試合が決まるたびにお客様をよんでおもてなしのアレンジをする仕事だった。最初は何となく引き受けた仕事だったが、あとで結構面倒ということが分かり始めた。プレミアリーグは大体ホーム戦の予定が立つのだが、当時アーセナルはチャンピョンズリーグに出場できるかどうかの瀬戸際で、プレイオフに出場していた。つまり試合に勝つとホーム戦が増えるが負けると予定がなくなる。このことはシーズン序盤のカップ戦もそうであるし、後半からはじまるFAカップにおいては抽選も確認していないとホームになるかアウェイになるかで、試合があるかないかの予定もわからない。つまりかなりのサッカー通でないと、お客様へのおもてなしの準備すらできないというわけだった。マンC、マンU、チェルシー等相手チームが強いと、お客様は簡単に決まったが、対戦相手が弱いとお客様を呼ぶのも大変だった。対戦相手にアフリカや、中東の選手がいると、その商社の営業部に直接連絡をして、このチームにはコートジボワールの選手がいるから、コートジボワール大使館か、鉄鋼の現地の会社をよんでもてなしてはどうかという提案を私からしたりした。

 マニュアルは完成したが、実際に使ってみないと勝手がわからないだろうという会社の計らいもあり、一度私もアーセナルのプライベートボックスをお客様と一緒に利用した。その時はアーセナルVSベシクタシュ(トルコ)という試合で、この試合に勝てばチャンピョンズリーグへの出場が決まるというプレイオフの大事な試合だった。当時のベシクタシュにはデンバ・バがまだいた。アーセナルは加入したばかりのサンチェスが大活躍して試合には勝った。

 お客様も大変盛り上がったが、接待の効果は大変微妙だなと思った。今回のお客様はたまたまアーセナルファンが多かったが、中東のチーム好きのお客様を呼ぶことだってよくあるのだ。もし試合にアーセナルが勝って、変な感じで接待が終わることだって十分ありえる。こんな場所で本当に商談なんかできるのだろうか。スポーツ観戦の接待はお客様を呼ぶのは簡単かもしれないが、お客様の満足度は試合内容で決まる。

c

 そんなわけで私は否が応でもアーセナルの試合を見続ける必要があり、また試合に勝つことはお客が見つけやすくなることにもなり、アーセナルの応援をするようになっていた。冬になり、ガラタサライ(トルコ)VSアーセナルのアウェイマッチにアーセナルスタジアムからクリスマスパーティーへの総務部へ招待状が届いた。アウェイ戦をテレビで観戦し、料理もご馳走になれる、またそのテレビの試合にはアーセナルの伝説のディフェンダー、マーティン・キーオンも来てライブで解説をするとのこと。当時の総務部の直属の上司はそんなお客様集めもできないテレビ観戦には全く興味がなかった。しかしながら私は上司にこの試合にお客様がいかないのであれば、他のボックスを持っている会社との関係づくりにどうしても私が行った方が良いという説得した。上司は渋々納得してくれたが、条件がありその上司も来ることになった。選手控室も見れて大変良い思い出になったが、他社の関係づくりにはまったく意味がなかった。

 結局その商社には一年程度しか働かなかったが、このアーセナルスタジアムで働かせてもらったのは、人生の宝になり、そして私はグナーになったのであった。

 

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。