イギリス賃貸が激変!Renters’ Rights Act 2025を解説

イギリス賃貸が激変!renters rights act 2025
あやか

なんかイギリスの労働党が頑張ったか、余計なことをやったかで、2026年の5月から賃貸契約がイングランドでだいぶ変わると聞いてます。どうしたらいいですか。

2026年5月1日から、イギリスの賃貸ルールが根本からひっくり返ります。

「Renters’ Rights Act 2025(賃借人権利法)」って聞いたことありますか? これ、イングランドで家を借りている1100万人に影響する、かなり大きな法律改正なんです。しかも日本人の駐在員や留学生にとっては、正直けっこう厳しい変更も含まれてる。

僕自身、ロンドンでリロケーションサービスをやっていて、お客さんから「新しい法律で何が変わるんですか?」って毎日のように聞かれます。だから今回、できるだけわかりやすく整理してみました。

新しい賃貸の法律ができたって聞いたんですけど、日本人にも関係あるんですか? 家賃を前払いすれば大丈夫って聞いてたのに…

むしろ日本人にこそ影響が大きいんだよ。家賃の前払いが最大1ヶ月に制限されるから、今までの「半年分まとめて払う」が通用しなくなる。でも借家人の権利はかなり強くなるから、知っておけば安心だよ!

私のお客様で、2月に契約して、6月ぐらいに8月で退去してほしいという通知をもらいました。学生街だったので、9月契約だと家賃が上がるのです。こういうわけのわからんセクション21通知(第21条通知)ができなくなったのはありがたいです。

目次

そもそもRenters’ Rights Act 2025って何?

イギリスの国会での様子

ざっくり言うと、イギリスの賃貸ルールを借家人にとって有利に作り変える法律です。

これまでイギリスの民間賃貸って、実はかなり借主に厳しかったんですよ。「民間賃貸住宅は最も手頃でなく、質が低く、最も不安定な住宅だ」なんて批判されてたくらい。で、その元凶になっていた古い制度をごっそり変えましょう、というのがこの法律の趣旨です。

旧制度の問題点:第21条という「恐怖のルール」

1988年の住宅法で作られた「アシュアード・ショートホールド・テナンシー(AST)」という契約形態。これ自体は定期の賃貸借契約で、日本でいう普通の賃貸に近い感じです。

問題はここからで。ASTには「第21条(Section 21)」っていう条項がセットでついてた。これがとんでもなくて、大家が理由なしで借家人に「出て行ってください」と言えるルールだったんです。

つまりどういうことかというと、水漏れの修理を頼んだだけで「面倒な借家人だな、追い出そう」ができてしまう。家賃の値上げに反対したら「じゃあ退去で」って言われかねない。いわゆる「報復立ち退き」ですね。これがイギリスのホームレス問題の大きな原因にもなっていました。

1100万人を守るための新法

この状況を変えるために生まれたのがRenters’ Rights Act 2025。大家と借家人の力のバランスを根本から見直して、イングランドの借家人にかつてないほどの居住安定と柔軟性を与えよう、という法律です。

施行日は2026年5月1日。この日を境に、イギリスの賃貸市場は大きく変わります。

既存のAST契約もすべてAPTに自動移行する

議長のアップ

ここ、めちゃくちゃ大事なポイントです。

「新しい法律って、これから契約する人だけが対象でしょ?」って思うかもしれないけど、違います。2026年5月1日の施行後、すでに契約済みのAST(定期建物賃貸借契約)もすべて自動的にAPT(アシュアード・ピリオディック・テナンシー)に切り替わります

つまり今イギリスで賃貸に住んでいる人も、全員この新ルールの対象になるということ。「自分はもう契約してるから関係ない」とは言えないんですよね。逆に言えば、今の契約で不利な条件があっても、施行後は新法の保護を受けられるようになる。これは借家人にとってかなりのメリットです。

え、今住んでる物件の契約も勝手に変わるの? 大家から何か連絡が来るの?

法律の施行で自動的に変わるから、特別な手続きは不要です。ただ、大家やエージェントから説明の連絡が来る可能性はある。変更点を自分でも把握しておくのが安心です。

固定期間の契約がなくなる:ローリング契約って何?

ロビー活動をする人

新法で一番大きな変化は、固定期間の賃貸契約がなくなること。

これまでは「6ヶ月契約」とか「12ヶ月契約」が普通でしたよね。でも2026年5月1日以降、すべての新規契約が「アシュアード・ピリオディック・テナンシー(APT)」、いわゆるローリング契約(無期限の継続契約)になります。

借家人は2ヶ月前の通知でいつでも退去OK…ただし注意点あり

ローリング契約になると、借家人はいつでも2ヶ月の通知(Section 13A notice)を出せば退去できます。「契約期間が残ってるから違約金が…」みたいな心配がなくなるわけです。転勤が急に決まった駐在員の方とか、これはかなり助かるはず。

ただし、ここで一つ気をつけてほしいのが「2ヶ月」の数え方。単純に通知を出した日から2ヶ月後に退去できるわけじゃないんです。

どういうことかというと、通知期間は家賃の支払いサイクル(テナンシーピリオド)に合わせて終了する仕組みになっています。つまり、通知を出してから最低2ヶ月が経過し、かつ次の家賃支払い日の前日まで契約が続く、ということ。

具体例で見てみよう

たとえば、毎月15日が家賃の支払い日だとします。テナンシーピリオドは毎月15日〜翌月14日。

もしあなたが5月30日に退去の通知を出したとしましょう。「5月30日+2ヶ月=7月30日に退去できるかな?」と思うかもしれないけど、そうはならない。通知期間は家賃の支払いサイクルの区切りに合わせる必要があるんです。

5月30日から2ヶ月後は7月30日。でも次のテナンシーピリオドの区切りは8月14日(7月15日〜8月14日の期間の最終日)。だから実際に契約が終了するのは8月14日になります。

ちょっとわかりにくいですよね。ポイントをまとめるとこうなります。

①通知日から最低2ヶ月は必要。②その2ヶ月が経過した後の、次の「テナンシーピリオドの最終日」が実際の退去日になる。だから場合によっては、実質2ヶ月半くらいかかることもある。

逆に言えば、退去したい日から逆算して、なるべく早めに通知を出しておくのが賢いやり方です。転勤や帰国の日程が決まったら、すぐに動くのがベスト。

大家は正当な理由がないと退去させられない

一方で大家はどうかというと、借家人を退去させるには「法律で定められた正当な理由(第8条)」が必要になります。たとえば物件を売却するとか、大家自身がそこに住むとか。「なんとなく気に入らないから」では追い出せない。

これまでの第21条(無過失立ち退き)は完全に廃止。借家人にとっては「安心して住み続けられる」環境ができるってことですね。

家賃の前払いが最大1ヶ月に:日本人への影響が一番大きい

現金を大量に払っている家族

正直に言うと、ここが日本人にとって一番痛いところ。

イギリスでクレジットヒストリー(信用情報)がない外国人って、審査を通すのが難しいんです。だから今までは「家賃を半年分、場合によっては1年分まとめて前払いします」って言って、お金で信用を補う方法がよく使われていました。僕のお客さんでもこのパターンはすごく多かった。

でも新法では、大家が受け取れる家賃の前払いは最大1ヶ月分まで。資金力のある人が物件を独占するのを防いで、誰でも平等に家を借りられるようにする、というのが立法趣旨です。理念は素晴らしいんだけど、外国人にとっては「お金で信用を買う」唯一の武器を失うことになる。

じゃあどうする?保証人代行サービスが新常識に

前払いが使えなくなったら、どうやって審査を通すか。いくつか方法があります。

まず有力なのが、保証人代行サービス(Guarantor Services)の利用。Housing HandやYour Guarantorみたいな会社があって、有料であなたの保証人になってくれます。年間で家賃の数パーセント程度の費用がかかるけど、これがスタンダードになっていくと思います。

それ以外にも、銀行の英文残高証明書を用意するとか、勤務先の雇用証明書(日本の本社からの駐在証明など)を出すとか。審査書類をしっかり揃えることが、今まで以上に重要になります。

渡英前の準備がカギ。ここ、本当に強調しておきたい。

家賃オークション禁止と値上げ制限

オークションしている人々

ロンドンの人気エリアだと、物件の内見に何十人も来て、「うちは月£100多く出します」「いやうちは£200上乗せで」みたいな家賃の競い合い(ビディング)が起きてたんですよね。特にコロナ明けはひどかった。

新法ではこれが違法になります。大家や仲介業者は広告に家賃をちゃんと明記して、それ以上のオファーを求めたり受けたりすることができなくなる。

さらに、家賃の値上げは1年に1回のみ。不当な値上げだと思ったら、借家人は異議を申し立てる権利がある。住んでいる途中で急に家賃を上げられる心配が減るのは、精神的にもかなり楽ですよね。

ペット飼育の権利と差別禁止ルール

家族とペット

個人的にうれしいなと思ったのがペットの話。

新法では、借家人がペットを飼う許可を大家に求める法的な権利が認められます。大家は「物件が狭すぎる」とか「建物の規約で禁止」とか、正当な理由がない限りこの要求を拒否できなくなる。イギリスは動物好きの国だから、この変更を待ってた人は多いと思います。

子育て世帯やベネフィット受給者への差別も禁止

もう一つ大事な変更が差別の禁止。大家が「子どもがいるから」とか「公的給付(ベネフィット)を受けているから」という理由で入居を断ることが明確に違法になります。

ちなみに大家側にも一定の権利はあって、自分や近親者(親、子、兄弟、祖父母など)がその物件に住むために立ち退きを求めることは認められています。ただし、契約開始から最初の12ヶ月間は行使できず、4ヶ月前の通知が必要。借家人をいきなり追い出すようなことはできない設計になっています。

渡英を考えている人が今からやっておくべきこと

イギリスの先生に保証人になる様にお願いしている日本の教授

この法律、借家人を守る目的で作られているから、基本的には良い方向の変化です。でも日本人にとっては、家賃前払いの制限で入居審査のハードルが確実に上がる。

だから早めに動くことが大事。具体的には、こんな準備をしておくと安心です。

まず保証人代行サービスの情報を集めておく。費用感や申し込みの流れを事前に調べておくだけで、渡英後のバタバタが全然違います。次に、銀行の英文残高証明や雇用証明書を日本にいるうちに取得しておくこと。現地に着いてから「あの書類がない」と焦るのが一番つらいパターンです。

それから、新法では借家人の権利がかなり強化されているので、自分の権利を知っておくこともすごく大事。「何かあっても法律が守ってくれる」と知っているだけで、異国での生活の安心感が違いますから。

2026年5月1日はもうすぐです。わからないことがあれば、遠慮なく相談してくださいね。

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この記事を書いた人

西島伸一朗のアバター 西島伸一朗 代表 / ディレクター

JTECのディレクターであり創業者。
2007年にロンドンへ移住。アクトンの日系不動産仲介を皮切りに、ノッティングヒルやフィンチェリー、さらにイーリングといった地域で豊富な賃貸仲介経験を積み、独立。Level 3 Certificate in Letting and Managing Residential PropertyとLevel 3 Award in The Sale of Residential Propertyと取得済。
趣味はバドミントン。グーナーであり、Saunaguildの運営者。

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