山田さんイギリスで働くことになったのですが、リモートでの仕事がほとんどなので、賃貸が安く、かといって田舎でないところに住みたいです。
最近、こういう相談がうちに本当に増えています。その答えのひとつが、リバプールです。
ロンドンと比べると家賃はざっくり3分の1。しかも電車に乗れば2時間ちょっとでEustonに着きます。ビートルズとサッカーの街、というイメージが強いかもしれませんが、実際に住むとなるとまた別の顔が見えてきます。再開発で街全体がぐっと垢抜けた一方で、エリアによる治安の差はかなり激しい。学区の話もシビアです。家具なし物件の比率も独特で、日本人ファミリーが事前情報なしで飛び込むと、けっこう面食らいます。
この記事では、2008年からイギリスの不動産業界に関わってきた僕が、リバプールで賃貸を探すときに「ここだけは知っておいたほうがいい」というポイントを全部まとめました。エリア選びから家賃相場、カウンシルタクス、学校まで、ファミリーでの移住を想定して書いています。
リバプールってサッカーと音楽の街ですよね?正直、ファミリーで住む場所としてどうなんでしょう…。治安も心配だし、学校選びも全然分からなくて。
その不安、よく分かりますよ。実はリバプールは「住むエリアさえ間違えなければ」イギリスでもトップクラスにコスパのいい街なんです。南部のWoolton(ウールトン)やMossley Hill(モスリー・ヒル)あたりは緑も多くて教育水準も高いんですよ。順番に解説していきますね。
リバプールのエリアの特徴


リバプールはイングランド北西部、マージー川の河口に広がる港町です。人口は約49万人で、ざっくり大阪市の4分の1くらいのサイズ感。都市圏で見ると150万人を超える、れっきとした大都市になります。
歴史的には19世紀の海運貿易で世界有数の港として栄えた街で、街のあちこちに当時のヴィクトリアン建築が残っています。ユネスコの世界遺産には2021年に登録抹消された経緯がありますが、それでも街並みの美しさは健在です。Albert Dockやウォーターフロントを歩くと、「ああ、ここはやっぱり特別な街だな」と感じる瞬間があります。
大学都市としての顔もデカい。University of Liverpool、Liverpool John Moores University、Liverpool Hope University。この3大学だけで学生人口は7万人近くいます。これが何を意味するかというと、賃貸市場が学生に引っ張られていて、特にHMO(シェアハウス)や1ベッドのマーケットがやたら活発、ということです。
産業面では、医療・バイオテクノロジー、デジタルクリエイティブ、観光、港湾物流が柱。最近は「Knowledge Quarter」と呼ばれるエリアに大学・病院・研究施設が集積していて、職住近接を実現したい人には魅力的な選択肢になっています。
そして当然、サッカー。LiverpoolとEvertonというプレミアリーグの2クラブの本拠地で、週末になると街中が真っ赤になります。これだけでリバプール移住を決める日本人もいるくらい、文化的なパワーは絶大です。
リバプールとロンドンの公共交通機関


正直に言うと、リバプールはロンドンへの「通勤圏」ではありません。これは最初にはっきりさせておきたいです。
でも、ロンドンへの「移動」という意味ではかなり優秀です。Liverpool Lime StreetからLondon Eustonまで、Avanti West Coastの最速便で約2時間3分。1日58本くらい走っていて、ピーク時は1時間に2本。月に数回ロンドンに出張、みたいな働き方ならまったく問題ないレベルですね。
料金は事前購入のAdvance Singleで£30〜£60くらいが相場。当日券の自由席は£100を超えることもザラなので、移動が決まっているなら必ず先に押さえておくのがコツです。
市内の足はMerseyrailという地下鉄+近郊電車のネットワークがメインで、Wirral半島やSouthport、Chesterまで広くカバーしています。バスはArrivaとStagecoachが運行していて、市内中心部は移動に困りません。Mersey Tunnelで車で対岸に渡れるのもリバプールならではの利便性です。
マンチェスターへのアクセスもいいですよ。電車で約50分。マンチェスター空港まで1時間20分前後で行けるので、日本との往復もそこまで不便じゃないです。
ちなみに、車を持つかどうかは住むエリアでけっこう変わります。都心部のアパートメントなら不要、南部のファミリーエリアに住むなら1台あったほうが学校送迎も買い物も圧倒的に楽、というのがざっくりの目安です。
リバプールの治安


ここがリバプールでいちばん大事な話になります。
リバプールの全体的な犯罪統計は、正直ロンドンより高めに出ます。でもこの数字を鵜呑みにすると判断を誤りますよ。エリア間の差が極端にデカいからです。「リバプールは危ない」じゃなくて「リバプールのどこに住むか」がすべて。
住むのにおすすめの治安良好エリアを挙げると、こんな感じです。
Woolton(ウールトン)、Mossley Hill(モスリー・ヒル)、Allerton(アラートン)、Childwall(チャイルドウォール)、Crosby(クロスビー)、Aigburth(エイグバース)。リバプール南部や沿岸部のエリアで、犯罪発生率は市平均よりかなり低く、緑が多くて、コミュニティもしっかりしています。日本人ファミリーの相談を受けたら、僕がまず提案するのはこのあたりですね。
逆に、避けたほうが無難なエリアもあります。Everton、Anfield、Kirkdale、Toxteth、Bootleの一部です。これらは犯罪発生率が市平均を上回る傾向があって、特にファミリーで住むには向きません。Anfieldは「リバプールFCの聖地」だから熱狂的なファンには魅力的に見えるかもしれませんが、住環境としては別の話です。
都心部のBaltic TriangleやRopewalksは再開発でめちゃくちゃおしゃれになった一方、夜間は酔っ払いトラブルやスリも多いです。若手単身者なら全然アリですが、子連れ世帯にはあまりおすすめしません。
物件を決める前に、必ずPolice.ukの犯罪マップで「番地レベル」までチェックしてください。同じウォーターフロントでも、通り1本違うだけで犯罪件数がガラッと変わります。これは本当によくある話なんですよ。
リバプールの賃貸物件の価格の平均


本題、家賃の話です。
ONS(国家統計局)の最新データだと、リバプールの民間賃貸の平均月額は£888(2026年2月時点)。前年同月比で6.6%上昇しています。賃貸市場全体としてはけっこう熱い動きをしている街、と理解しておいたほうがいいですね。
間取り別に細かく見ていきましょう。Rightmoveの掲載データをベースにした相場感はこんな感じです。
- スタジオ:£575前後 City Centreやバルティック・トライアングルに集中。学生・単身者向けです。
- 1ベッド:£669〜£700 ウォーターフロントの新築コンドからヴィクトリアン改装フラットまで幅広いです。
- 2ベッド:£815前後 単身者の余裕ある暮らしから、子なしカップルまで。新築モダンが人気ですね。
- 3ベッド:£936前後 ファミリー定番。郊外のテラスハウスやセミデタッチが中心です。
- 4ベッド以上:£1,265前後 南部の戸建て中心。プレミアム学区はもう少し上振れします。
※出典:ONS Private Rental Index 2026年2月/Rightmove掲載データ(2026年4月調べ)
ロンドンと比較すると、ざっくり言って1/3〜半額。たとえばロンドンの2ベッドフラットの平均は£2,400前後ですから、リバプールなら同じ予算で4ベッドの戸建てが余裕で借りられてしまいます。この差はファミリーにとって本当にデカいですよ。
マンチェスターと比べてもリバプールのほうが2割ほど安いです。北西部で「コスパ重視で家を選びたい」となると、リバプールはかなり強い選択肢になります。
リバプールの物件の特徴


リバプールの賃貸事情で、日本人がいちばんびっくりするのが「家具付き/家具なし」の話です。
Rightmoveの調査では、リバプール市場の約54.7%が家具付き(Furnished)として出ています。これはイギリスの地方都市としてはかなり高い数字で、学生人口の多さが影響しています。City Centreの1ベッド・2ベッドフラットなら、家具付き率は70%を超えるエリアもあるんですよ。
逆に、3ベッド以上のファミリー物件は55%以上が家具なしです。郊外の南部エリアで子育て向きの物件を探すと、まずほぼ確実に家具なしになります。ここで注意してほしいのが、イギリスの「家具なし(Unfurnished)」は本当に何もないこと。日本の感覚だと「冷蔵庫と洗濯機くらいは付いてるよね?」と思いがちですが、白物家電すら付いてない物件は普通にあります。
家具・家電をゼロから揃えると、ファミリーでざっくり£3,000〜£6,000くらいの初期投資を見ておいたほうがいいです。IKEAやArgos、Facebook Marketplaceあたりを上手く使えば抑えられますが、最初の1か月はそれなりに出ていきますよ。
ペットの話もしておきましょう。Zooplaの調査だと、広告時点で「ペット可」と明記されているリバプールの物件は全体の約6.6%しかありません。1,639件中108件、というかなり厳しい数字です。
ただし、希望を持ってほしい話もあります。2026年5月から完全施行されるRenters’ Rights Act 2025(賃借人権利法)によって、テナントは大家にペット飼育の同意を求める権利を持つようになり、大家は合理的な理由がない限り拒否できなくなります。つまり「広告にペット可と書いてなくても、入居後に交渉して受け入れてもらう」というルートが法的に強化されるんです。
とはいえ、現実的には大家との関係性が一番大事。日本からペットを連れていく場合は、まず短期の住まいで現地入りして、そこから直接大家と交渉するのがいちばんスムーズです。ペット保険、追加デポジット、ペット履歴書(前の家でのトラブル歴がない証明)あたりを揃えて出すと、印象がかなり違いますよ。
リバプールの賃貸物件競争率


「リバプールは家賃が安いから物件もすぐ見つかるんでしょ?」
これ、半分正解で半分ハズレなんです。
市場全体の空室率は約6%。そして良い物件は掲載から10〜18日で成約していきます。特に南部の人気学区エリアや、City Centreの新築フラットは、出てから数日で内見申込が殺到します。「いい物件は週末をまたがない」というのが現場の感覚値ですね。
繁忙期はやっぱり大学の新学期前。6月〜9月がピークで、この時期はとにかく物件の動きが速いです。逆に11月〜2月は比較的落ち着いていて、じっくり選びたい人にはこっちのほうがおすすめになります。
リモートで日本からリバプール物件を探す場合のコツも書いておきますね。
まず、WhatsAppやFaceTimeでの内見を頼める不動産屋を探すこと。リバプールの大手エージェントはほぼ対応してくれます。ただし、写真と動画では絶対に分からない要素があります。冬の寒さ、結露、隣人の騒音、裏通りの治安。これらは現地の内覧時にプロが見るチェックポイントを押さえたうえで、リロケーションエージェントに代理内見を頼むのが安全です。
そして、Renters’ Rights Actの絡みで、家賃の前払いに上限がかかる方向に進んでいます。これまでは「6か月分前払いで一気に決める」みたいな荒技で外国人が物件を確保していたケースがありましたが、これからは難しくなります。代わりに重要になるのが、Right to Rentの書類(パスポート、ビザ、シェアコード)と、残高証明や雇用証明です。日本にいる段階で英訳済みの書類を準備しておくと、現地に着いてから動きが圧倒的に速くなりますよ。イギリス賃貸の入居から退去までの流れもあわせて確認しておくと安心です。
リバプールのカウンシルタクス


カウンシルタクスは住む物件のBand(査定階級)で決まります。リバプールは2025/26年度に4.99%の値上げがあって、Band Dの年額は£2,147.22。北部の都市としてはやや高めの水準ですね。
Band別の年額目安はこんな感じです(標準ratioで計算)。
- Band A:£1,431.48/年(月約£119)
- Band B:£1,670.06/年(月約£139)
- Band C:£1,908.64/年(月約£159)
- Band D:£2,147.22/年(月約£179)
- Band E:£2,624.38/年(月約£219)
- Band F:£3,101.54/年(月約£258)
- Band G:£3,578.70/年(月約£298)
- Band H:£4,294.44/年(月約£358)
※出典:Liverpool City Council 2025/26 council tax rates(2026年4月調べ)
リバプールの戸建て物件の多くはBand AかBand Bに収まることが多いです。ヴィクトリアン時代に建てられた住宅が多いリバプールでは、当時の評価額がベースになっているせいで、意外と低めのBandが多いんですよ。これは住人にとってラッキーな話ですね。
知っておきたい割引・免除はこちらです。
- 1人暮らし割引:25%オフ 単身世帯は無条件で適用されます。
- 学生免除:100%オフ 全員フルタイム学生の世帯は完全免除になります。
- 空室割引 短期間の空室には条件付きで割引が出ます。
申し込みはliverpool.gov.uk/council-taxから。入居後すぐに登録するのが鉄則です。ほっとくと請求がBand基準のフルチャージで来るので、引越し当日に手続きするくらいの感覚でいきましょう。
リバプールの小中学校


ファミリー移住で最重要パートがここです。リバプールの公立校は、エリアによって本当に質がバラバラ。Ofsted「Outstanding」のトップ校は南部の人気エリアに集中していて、当然そのエリアの家賃にもプレミアムが乗ってきます。
プライマリースクール(小学校)の人気校 ベスト5
- St Silas Church of England Primary School(Toxteth) Ofsted Outstanding
- Smithdown Primary School(Wavertree) Ofsted Outstanding
- Whitefield Primary School(Everton) Ofsted Outstanding
- The Beacon Church of England Primary School(Everton) Ofsted Outstanding
- St John’s Catholic Primary School Ofsted Outstanding
セカンダリースクール(中等学校)の人気校 ベスト5
- The Blue Coat School(Wavertree) GCSEトップ成績割合 81.7%
- Liverpool College GCSEトップ成績割合 34.3%
- King David High School GCSEトップ成績割合 32.0%
- The Belvedere Academy GCSEトップ成績割合 29.2%
- St Edward’s College GCSEトップ成績割合 23.0%
Blue Coat Schoolは選抜制のグラマースクール扱いで、入学にはエントランス試験があります。でも公立で81.7%のトップ成績は全国でも飛び抜けた数字。「リバプールの教育レベルってこんなに高いの?」と驚かれることが多いんですよ。
ここで大事な注意点を1つお伝えします。
キャッチメントエリア(学区)は毎年変動します。不動産屋に「この物件は◯◯学校の学区内ですよ」と言われても、それを100%信じてはいけません。学校の人気が高まると学区がどんどん狭くなって、去年まで対象だったストリートが今年は外れている、ということが普通に起きます。
必ず自分で確認してください。学校の公式サイトに掲載される直近年度のadmission criteriaと、実際にその学区で入学が確定した最遠の住所(last admitted distance)まで調べておくのが安全です。これをやらないでリバプールに引っ越して、学校に入れなくて泣く日本人ファミリーを何件か見てきました。
入学申し込みのスケジュールも要注意ですよ。プライマリーは1月中旬、セカンダリーは10月末が締め切り。これに乗り遅れると、希望校はもう諦めるしかありません。「とりあえず引っ越してから学校探そう」は通用しないんです。
リバプールのナーサリー


未就学児を連れての移住なら、ナーサリーの確保もマストになります。リバプールでは、Ofsted「Outstanding」のプライマリースクールに併設されているナーサリーが特に評判がいいですね。
たとえばSt Sebastian’s Catholic Primary School and Nursery。プライマリーがOutstanding評価で、併設ナーサリーも質が高いです。近隣のSacred Heart Catholic Primary School and Nurseryも「Good」評価で、こちらも候補に入れる価値があります。
南部のWoolton、Mossley Hill、Allerton周辺は質の高いナーサリーが点在していますが、人気園は1年以上の待機リストがありますよ。ここはOxfordやCambridgeほどではないにせよ、それでも「即申し込み」が鉄則です。物件の目処がついた段階で、エリアを絞って5〜6園に同時申し込みするくらいの動きでちょうどいいですね。
大学運営のナーサリーも狙い目です。University of LiverpoolのUniversity Childcareは学生・職員向けが優先ですが、空きがあれば外部の子も受け入れています。質も施設も良いですよ。
政府の15時間/30時間無償化制度は3歳から使えます。働いている親なら30時間まで無償(条件あり)。リロケーションで来た直後は雇用証明が間に合わないことが多いので、まずは15時間枠で入って、後から30時間に切り替えるのが現実的です。
リバプールは「コスパ」と「文化」を両立できる珍しい街


長くなりましたが、ここまでの話をまとめると、リバプールは「ロンドンより圧倒的に安く、それでいて街としての魅力をちゃんと持っている数少ない選択肢」だと言えます。
南部のWoolton、Mossley Hill、Allertonあたりに住めば、緑豊かなコミュニティで子どもを育てられます。学校レベルも全国上位。週末はAlbert Dockやウォーターフロントを散歩して、平日はLondon EustonまでAvantiで2時間ちょっと。家賃はロンドンの3分の1。これだけ揃った街は、イギリス全体を見てもそう多くないんですよ。
もちろんリスクもあります。エリアによる治安の差、家具なし物件の比率、学区の変動、ペット可物件の少なさ。ただ、これらは全部「事前に知っていれば対処できる」種類の問題です。
サッカーが好きな人にとっては言うまでもない街ですが、それ以上に「教育」と「コスパ」を両立できる街として、もっと日本人に注目されていいと思います。実際、僕のお客さんでも最近リバプール移住の相談がじわじわ増えていて、そのほとんどが「住んでみたら想像の何倍も良かった」と言ってくれます。
もしリバプールでの賃貸探しや学校選び、ペット連れの移住について具体的に相談したいことがあれば、いつでも気軽にJTECPCまでご連絡ください。現地のリロケーションエージェントとして、物件の代理内見から契約サポートまで、トータルでお手伝いできますよ。









