チェシャー州の小さな町ランコーン(Runcorn)。でも地図を開くと、リバプール中心まで車で20分、マンチェスターまで40分、ロンドンにも電車1本という絶妙なポジション。家賃はロンドンの半分以下。日本語情報がとにかく少ない。
JTECでは2008年からイギリスの地方都市の賃貸探しをお手伝いしてきてきました。今日は「ランコーンってどうなの?」というお問い合わせに毎回お答えしていることを、記事にまとめます。
ランコーンって名前は聞いたけど、日本人が住んで大丈夫な場所なんですか?
結論から言うと、エリアさえ選べば全然アリです。ランコーンは工業の町というイメージが先行しがちなんですが、実は「Runcorn Old Town」「Weston」「Sandymoor」など、エリアによって雰囲気がガラッと変わります。
ランコーンのエリアの特徴

ランコーンはチェシャー州Halton自治区にある人口約6万1,000人の町です。マージー川沿いに発展してきた歴史ある工業都市で、かつてはICIなどの化学産業で知られていました。今もイネオス(INEOS)などの化学プラントが稼働していて、この産業基盤が町の雇用と経済を支えています。
「工業都市」と聞くとちょっと身構えるかもしれません。でも実際に歩いてみると、町は大きく3つのエリアに分かれていて、それぞれ全然違う顔を持っています。
ひとつは川沿いの旧市街「Runcorn Old Town」。赤レンガのテラスハウスが並び、歴史的な教会や港の跡が残るエリアです。家賃はかなり安く、治安は場所によるといったところ。もうひとつは1960年代に計画的に開発された「Runcorn New Town」で、Halton Lodge、Palace Fieldsなどのエステート(公営団地)が広がります。そして最後が、M56寄りの南側に広がる新興住宅地「Sandymoor」「Beechwood」「Preston Brook」。ここがファミリー駐在員の主な居住候補になります。
ちなみにイギリスの住宅は、同じ「家」に見えても時代によって間取りや作りが全然違います。物件選びで迷ったら、イギリスの住宅様式の基礎知識を先に押さえておくと、内見での見る目が変わります。
町の中心にはThe Brindley Theatre(劇場兼文化施設)、大型ショッピングモールのHalton Lea Shopping Centre、そしてWidnesとランコーンを結ぶMersey Gateway Bridge(2017年開通)がランドマーク。自然派には、マージー河口のWigg Island Community ParkやSandymoor周辺の運河エリアが散歩コースとして人気です。
そしてここ、実は日本人ファミリーとのご縁が深い町でもあります。ランコーンにはYKK Fasteners(UK)Ltdのイギリス拠点があり、ファスナー・ジッパー関連の製造・販売を担っています。ヨーロッパ市場向けの重要拠点のひとつで、日本本社からの駐在員が定期的に赴任されるエリア。「なぜランコーンに?」と思った方、YKKつながりのご赴任、というパターンがまず考えられます。そのほかイネオス、アストラゼネカなど化学・医薬の多国籍企業もランコーン周辺に拠点を構えており、専門職のエクスパットが一定数暮らす国際色もある町です。
ランコーンと主要都市への公共交通機関

ランコーンの一番の強みは、実はこの「交通ハブ性」です。
ロンドン方面はRuncorn駅からWest Coast Main Line(Avanti West Coast運行)でロンドンEustonまで直通、最速1時間55分ほど。1時間に1〜2本のペースで走っています。ロンドン出張が多い方にとってはかなり現実的な通勤範囲です。
リバプールへはRuncorn駅から電車で約15〜20分、Liverpool Lime Street駅に到着します。車でもM56・M62経由で20〜25分。リバプール・ジョン・レノン空港までは車で15分という近さ。
マンチェスターへは、Runcorn East駅から電車で約35分、Manchester Piccadilly駅まで直通。車ならM56でマンチェスター中心部まで40〜45分、マンチェスター空港までは30分弱です。
チェスター方面もM56一本で25分。Warringtonへも車で15分圏内で、Warrington Bank Quay駅経由でさらに選択肢が広がります。
バスは地元のArriva NorthwestやHalton Transportが運行していて、町内の移動には問題ないレベル。ただし深夜帯の本数は限られるので、夜遅く帰宅する方は車の保有が前提になるケースが多いです。
ランコーンの治安

ランコーンは「エリア選びが全て」と言っても過言ではありません。
Police.ukの犯罪マップで見ると、町の中心部(Old Town、Castlefields、Palace Fields周辺)は他エリアより犯罪件数がやや多めに出てきます。内訳は反社会的行動(anti-social behaviour)や軽犯罪が中心で、凶悪犯罪が目立つわけではありません。とはいえ、夜間に一人で歩くのは避けたほうが無難なエリアはあります。
一方、ファミリー駐在員にお勧めしているのは南部の「Sandymoor」「Beechwood」「Preston Brook」「Weston Point」「Norton」あたり。新しい住宅地で、治安も落ち着いていて、Ofstedで評価の高い学校にも近い。チェシャー州の中流エリアらしい雰囲気があります。
JTECのお客様にも毎回お伝えしているのですが、エリアを決める前には必ずPolice.ukの犯罪マップ(police.uk)で郵便番号単位で調べてみてください。ランコーンに限らず、イギリスの治安は「町」単位ではなく「通り」単位で見るのが正解です。
ランコーンの賃貸物件の価格の平均

2026年4月時点のランコーン賃貸市場を、Rightmove・Zooplaの掲載データから整理しました。
家賃相場(月額pcm)の目安:
- 1ベッドルーム フラット:£600〜£750
- 2ベッドルーム アパートメント/セミ:£750〜£1,000
- 3ベッドルーム セミデタッチド:£950〜£1,300
- 4ベッドルーム デタッチド:£1,400〜£1,800
(2026年4月調べ/出典:Rightmove・Zoopla掲載データより)
ロンドン・ゾーン3の同条件と比べると、ざっくり家賃は半額〜3分の1程度まで下がります。マンチェスター中心部と比べても2〜3割安い水準。同じ予算でより広い家、より広い庭、というのが現実的に可能になるのがランコーンの魅力です。
「安いだけならもっと北に行く選択肢もありますよね」とよく聞かれます。確かに。ただ、ランコーンは「安さ」と「主要都市へのアクセス」を両立しているのがポイント。その意味で、コスパで選ぶならリストに入れておいて損はありません。
ランコーンの物件の特徴

ランコーンの物件、ちょっと面白いデータがあります。
2026年4月16日時点で、Rightmoveに掲載されているランコーンの賃貸物件は全46件。そのうち「Furnished(家具付き)」は11件で、家具付きの割合は約24%でした。つまり、4件に1件しか家具付きがない計算です。ロンドン中心部が6〜7割家具付きであることを考えると、ランコーンはかなり「Unfurnished寄り」の市場と言えます。
ペット可の物件はZooplaで15件/40件、約37.5%。Renters’ Rights Actの影響もあり、ペット可の比率はイギリス全体で上昇傾向ですが、ランコーンはすでにその恩恵が出ているエリアのひとつです。犬・猫連れで赴任される方には朗報。
物件タイプはセミデタッチドとテラスハウスが中心。新興住宅地ではデタッチド(一戸建て)も比較的手が届きます。このあたりのイギリス住宅の13の種類と違いは、最初に押さえておくと物件サイトを見るのがすごくラクになります。
Unfurnished(家具なし)って、ベッドも冷蔵庫も何もないってことですか?
大抵そうです。キッチンのオーブンや備え付け家電は残っていることが多いですが、冷蔵庫や洗濯機はない、ベッドもソファもなし、というのが「Unfurnished」の標準。家具をゼロから揃えると£2,500〜£5,000程度は見ておいたほうが安心です。IKEAとFacebook Marketplaceをうまく使うと、かなり節約できます。
ランコーンの賃貸物件競争率

まず大前提としてお伝えしたいのが、ランコーンはそもそも賃貸物件の絶対数が少ないという事実です。
2026年4月16日時点で、Rightmoveに掲載されているランコーンの賃貸物件はわずか46件。Zooplaも40件前後。ロンドンなら1つの郵便番号エリアだけで何百件も出てくるのが普通ですが、ランコーンは町全体でこの数です。しかも3ベッド以上のファミリー向け物件に絞ると、20件台まで一気に減ります。
この「物件数の少なさ」は、競争の激しさというより、「出た瞬間に決断できないと、そもそも次が出てくるまで待つ時間が長い」という形で影響します。人気エリア(Sandymoor、Beechwood、Weston)の良物件は、掲載から1〜2週間で決まることが多く、第1希望の物件が出たら即アクション、というスピード感が必要です。
繁忙期は5〜9月。新学期前のファミリー移動がピークで、物件の回転がグッと速くなります。逆に11〜2月は比較的ゆったり探せる時期です。
会社契約(Company Let)ができる物件の特徴

日系をはじめとする駐在員のご家族からよくいただくのが「会社契約(Company Let)にしたい」というご相談です。一般的な個人向け物件がそのまま会社契約にできるかというと、答えはNO。
会社契約を受け入れてくれる物件には、いくつかの共通した特徴があります。
- 大家がプロフェッショナル・ランドロード(複数物件を所有する法人オーナー)であること。個人大家さんは個人契約しか受けないケースがほとんどです。
- Buy-to-Let mortgage(住宅ローン)ではなく、商業融資で購入された物件。Buy-to-Letの条件で会社契約が禁止されていることがあるため。
- 不動産会社が会社契約の取り扱い経験が豊富であること。契約書のテンプレートが個人契約と別物になる。
- 家賃相場より5〜10%程度高い設定になることが多い。法人の方がリスクは少ないように思えますが、実はイギリスでは個人契約ではテナントが家賃を支払わない場合、セクション8通知で最終的に退去させられますが、法人契約は別です。法人が倒産すると大変面倒なのです。
ランコーン等会社契約可能な物件は、正直かなり限られます。「会社契約OK」と最初から明示されている物件は全体の1割あるかないか。相場より高めの予算感と、Warrington寄り・Daresbury寄りの新興住宅地まで範囲を広げる柔軟性があると、選択肢が増えます。
個人契約のほうが圧倒的に有利
一方で、駐在員の方でもあえて個人契約選ぶケースが増えています。理由はシンプルで、選択肢が段違いに広いから。
- 個人契約なら大家さんが、ローンを持っているかどうか関係ないので選び放題
- 家賃交渉もしやすい(会社契約は大家側が強気になりがち)
- 契約の融通が効く(家具付き/ペット可/ガーデナー手配などのカスタマイズ)
- 入居までのスピードが速い。
- そして最後ですが、2026年5月から施行されるRenters Act 2025が圧倒的にテナントに有利になるからです。入居から二ヶ月で中途解約ができます。つまり入居日に退去を出せば、二ヶ月で解約可能です。
最近はご赴任者様が個人を結び、家賃相当額を会社から住宅手当として受け取る、という運用が増えています。このスタイルなら、選択肢の広さとスピードを両立できます。
日本からのリモートでの物件探しも、十分可能です。JTECでも、駐在員の方に代わってビデオ内見のアレンジ、契約書チェック、前払いのご相談までお手伝いしています。特に法人向けリロケーションサービスをご利用いただくケースでは、人事ご担当者様と直接連携して、会社契約か個人契約かの判断から契約締結まで、社員様のご家族ごと現地着陸までスムーズに進めるパターンが増えています。
契約時の交渉ポイントや「そこ落とし穴なんです」というコツは、イギリス賃貸契約でよくある10の誤解にまとめていますので、契約前に一読おすすめです。
ランコーンのカウンシルタクス

ランコーンの自治体はHalton Borough Council。カウンシルタクスの税率は毎年4月に更新されます。2025/26年度の年額目安は以下の通りです。
- Band A:約£1,620
- Band B:約£1,890
- Band C:約£2,160
- Band D:約£2,430
- Band E:約£2,970
- Band F:約£3,510
- Band G:約£4,050
- Band H:約£4,860
(2025/26年度/出典:Halton Borough Council公式サイトより。パリッシュ上乗せ分がある場合は追加料金となります)
2ベッド〜3ベッドのファミリー向け物件はBand BまたはCに入ることが多く、月額換算で£158〜£180程度。チェシャー内のアッパーミドル層エリア(Alderley Edge、Knutsford)と比べると、ランコーンはやや低めの税率設定です。
学生や単身の世帯、複数の大人でもエリアによっては割引が適用されるケースがあります。入居後に役所に申請することで、25%の単身割引や学生免除が受けられるので、該当する方は必ず申請を。
ちなみに入居後、カウンシルタクスの名義変更と同時に電気・ガス・水道・インターネットの手続きも必要になります。日本人駐在員がよくつまずくポイントなので、入居時の公共料金名義変更サービスに手順をまとめました。到着初週に見ていただくのがベストです。
ランコーンの小中学校

ランコーンには「Outstanding」または「Good」評価のプライマリー・セカンダリーが複数あります。ファミリー駐在員の学校選びは家選びと同じくらい重要なので、ここは丁寧に。
プライマリー(小学校)の主な選択肢:
- The Grange Infant School(Grange Way, Runcorn WA7)
- The Grange Junior School(Grange Way, Runcorn WA7)
- Beechwood Primary School(Runcorn WA7)
- Brookvale Primary School(Runcorn WA7)
- Moore Primary School(Warrington Road, Moore)
- Daresbury Primary School(Daresbury)
セカンダリー(中高)の主な選択肢:
- The Grange School(Beechwood、Runcorn最大規模のセカンダリー)
- Sandymoor Ormiston Academy(Sandymoor、新興の人気校)
- The Heath School(Weston)
- St Chad’s Catholic and Church of England High School(Norton、カトリック系)
各校の最新Ofsted評価は必ずOfsted公式サイト(reports.ofsted.gov.uk)で確認してください。評価は1〜2年で更新されることもあります。
注意してほしいのがキャッチメントエリア(学区)です。不動産屋さんが「この物件はあの学校の学区内ですよ」と言ってきても、それはあくまで過去の実績で、毎年少しずつ動きます。確定情報は必ずHalton Borough Councilの「School Admissions」ページで、最新年度のadmission criteriaを確認してください。申し込み締め切りは、セカンダリーが毎年10月末、プライマリーが翌年1月中旬。日本からの引越しタイミングと合わせて早めの準備がマストです。
ランコーンのナーサリー

未就学児(0〜4歳)をお持ちのファミリーには、ナーサリー選びも重要ポイント。
ランコーンで評判のいいナーサリーは以下のあたり:
- Bizzy Bees Day Nursery(Runcorn)
- Kids Planet Runcorn(旧Busy Bees系列、Halton Lea周辺)
- Little Stars Day Nursery(Murdishaw、Runcorn)
- Kiddi Caru Day Nursery Runcorn
イギリスでは3歳・4歳児に対して週15〜30時間の「Free Childcare Hours(無料保育時間)」が提供されます(所得等の条件あり)。ナーサリーによって受け入れ可否が違うので、申し込み時に必ず確認してください。
人気のナーサリーは待機リストが半年〜1年先まで埋まっているケースもあります。赴任が決まった段階で、とりあえず第1〜第3希望を連絡して「ウェイティングリストに名前を入れておいてください」と伝えておくのが鉄則です。
まとめ:ランコーンは「都市へのアクセス」と「広い家」を両立できる町

ランコーンは、派手な観光地ではありません。ロンドンの雑誌にもあまり登場しません。でも、リバプール・マンチェスター・ロンドンの3大都市にすべて電車で出られる立地で、家賃はロンドンの半分以下、庭付き3ベッドが月£1,000台で見つかる。この条件が揃う町は、イギリスでもそう多くありません。
「工業の町」という先入観を脇に置いて、Sandymoor・Beechwood・Prestonbrookといった南部の住宅地を候補に入れてみてください。チェシャー州らしい、静かで緑の多い暮らしが待っています。
JTECでは、ランコーンを含むチェシャー・リバプール・マンチェスター圏の物件探し、契約書チェック、入居立会い、学校リサーチまで一気通貫でサポートしています。「まずは情報収集から」という段階でも大丈夫です。よくあるご質問のQ&Aページも参考になれば。サービス全体の概要はJTECトップページからご覧いただけます。
ランコーンでの新生活、応援しています。

