イギリスのプロが教える不動産鑑定の極意(応用)

イギリス不動産鑑定 応用編
山田さん

イギリスの不動産の価格ってどうやって決まってるんですか?オーナーの言い値ですか。

イギリスで不動産を売却する際、最初の入口となるのが不動産査定です。

単に価格を出すだけの作業に思われがちです。実際には売り主がどの不動産屋に依頼するかを決めるうえで最も重要な場面です。

まだイギリス不動産鑑定の基本編をお読みでないのであれば、下記から先に読んでこちらに戻ってきてください。

その不動産屋が高く見積もれば、売主に喜ばれそうですが、実際に三ヶ月も経って売れないと信用を失います。低く見積もれば、売主に安すぎるというので、インストラクション(代理人としての依頼)をもらえません。これはイギリス賃貸のインストラクションにも言えることです。

査定の中心となるのは比較対象になる過去の物件の選定です。イギリスの不動産屋は、過去の売却事例を丹念に調べ、評価対象の物件とどこが似ていて、どこが違うのかを見極めます。

最近売れた物件の情報は、とりわけ大きなヒントになります。

ここでは、イギリスの不動産のプロがどのような過程で不動産を査定しているかを、順を追って説明していきます。


目次

イギリスの不動産の比較対象の証拠

物件の中で査定している不動産鑑定士

住宅市場の査定では、まず「実際にいくらで売れたか」という確かなデータが基礎になります。理想的な比較対象は下記になります。

  1. 同じ地域(最重要)
  2. 同種・同スタイル・同程度の広さ
  3. 似たような状態
  4. 最近売却された物件

もし隣の家がまったく同じ仕様で、前日に売れていたとしたら、それ以上の比較対象はありません。しかし現実には、ほぼありえません。

同じならびの住宅であっても、所有者が手を加えれば簡単に個性が生まれます。

内装、キッチンやバスルームの改修、増築など、時間とともに物件は「それぞれの顔」を持ち始めます。

そのため、見つかった売却事例がどれだけ似ていても、必ず何らかの違いが出てきます。査定の核心となるのが、その違いを埋める調整という考え方です。


イギリスの不動産の調整の技術

外で不動産を鑑定している

市場査定は、数字だけを当てはめればよい計算作業ではありません。実務経験の深いエージェントほど、市場の空気感や売り主の事情を読み取り、科学と芸術の中間のような人間的判断を行います。

調整が必要になるポイントは、物理的な特徴だけではありません。
次の三つの外部要因も必ず加味されます。

  1. 市場の状態(みんな買いたい時期か、買い控え(政府の印紙税の増加などで)がある時期か。)
  2. 売却された時期
  3. 売り主の事情(なんらかの理由で現金化を急いでる。)

市場は常に動いています。イギリスでは1980年代後半、2000年代半ばに大きなブームがあり、その後に急激な調整局面が訪れました。2007年のノーザン・ロック銀行の破綻は象徴的な出来事で、英国の住宅市場が世界的な金融危機に巻き込まれていく転換点となりました。

その後、しばらく落ち着きを取り戻しますが、2014~2015年頃のロンドンや南東部では再び過熱気味に。
2016年のEU離脱の投票では市場が大きく揺れ、取引件数が落ち込む時期もありました。
さらに2020年のパンデミックによるロックダウン、その後の印紙税(SDLT)免税措置による急回復など、市場は常に不規則に動きます。

こうした流れを理解していなければ、過去の売却事例を現在にそのまま当てはめることはできません。

調整の例を一つ挙げると、4か月前に20万ポンドで売却された物件があるとして、同期間に市場が毎月1%動いているのであれば、評価時点では4%の上昇を加味して208,000ポンドと見積もるという具合です。

売り主の事情も価格設定に影響します。


「すぐに売りたい」人と「最高値を狙いたい」人では、提示すべき価格が変わります。
査定額が208,000ポンドだとしても、スピード優先なら205,000ポンド程度、逆に強気で攻めるなら210,000~215,000ポンドというアドバイスもあり得ます。


イギリスの不動産の比較分析

他の物件の売却履歴と比較している

複数の比較対象を整理し、論理的に査定を組み立てるために使用されるのが「比較分析グリッド」です。

場所、築年数、広さ、状態、設備、売却時期などを一覧で並べ、評価対象物件との違いを具体的に数字へ落とし込みます。

少なくとも比較する対象は三つ以上が望ましいです。

他の似た物件の比較表

例として「21 William Road」を査定する必要があるとします。「11 William Road」を比較対象とする場合の考え方を簡単に紹介します。

・売却価格:205,000ポンド
・売却時期:4か月前
・特徴:4ベッドの増築あり、二重窓なし
・市場:毎月1%上昇中

これを評価時点に合わせると約213,000ポンド。そこから増築分の価値(仮に17,500ポンド)を差し引き、逆に二重窓の差(2,500ポンド)を加えることで、198,000ポンドという調整後の値が導かれます。

この作業を複数物件で行うのが不動産のプロの査定です。


イギリスの不動産査定の結論と比較物件のランク付け

理想は三つ以上の比較対象を使うことですが、それぞれの調整結果は必ずしも一致しません。201,700ポンド、194,000ポンド、200,000ポンドというように幅が出ます。

このとき重要になるのが、比較対象の「証拠能力」の見極めです。

評価対象に最も近く、調整項目が少ない事例ほど信頼性が高いと判断されます。売却時期が近いことも大きなポイントです。

複数の比較対象をランク付けし、最も説得力のあるデータを軸に、最終的な査定価格の幅を提示します。
例えば「21 William Roadの適正価格は195,000〜200,000ポンド」といった提案になります。


イギリスの不動産売却事例以外の情報も活用する

イギリスの不動産のプロの査定は、売れた物件だけを見ているわけではありません。

・市場から撤退した物件(売却をあきらめて、賃貸に回した)
・現在販売中の物件(RightmoveやZooplaで近接の物件を調査)
・現在すでにオファーが入っている物件との比較

こうした情報も、イギリスの不動産市場の今をつかむうえで欠かせません。

特に「売れずに撤退した物件」は、価格設定が強気すぎた可能性を示し、適正価格を判断する材料になります。


イギリスの不動産  査定のまとめ

不動産査定は、比較対象の収集から調整、分析グリッドの作成、ランク付けという一連のプロセスを丁寧に積み上げることで成り立ちます。単なる数字合わせではなく、市場の動きや売り主の事情を踏まえた総合的な判断が求められます。大体の値段は調査で調べられますが、最後は市場の雰囲気と、売主、バイヤーの雰囲気など芸術的な技も求められます。

・似ている物件を適切に選ぶ。
・違いを金額として整理する。
・複数の物件をデータを比較して結論を導く。
・売り主の状況を踏まえて価格戦略を組む。(売主が娘の結婚のために現金が欲しい等)

この一連の流れを正確に行えるかどうかが、不動産屋としての信頼を大きく左右します。どれほど市場が変わっても、「比較と調整」という原理は変わりません。プロが大切にしている基本姿勢はここにあります。

イギリスで不動産の購入を考えていらっしゃる方JTECにご一報くださいませ。

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この記事を書いた人

西島伸一朗のアバター 西島伸一朗 https://jtecpc.co.uk/

Japan TEC Property and Cleaning Service Ltd.(JTECPC.CO.UK)のディレクター。
2007年にロンドンへ移住。アクトンの日系不動産仲介を皮切りに、ノッティングヒルやフィンチェリー、さらにイーリングといった地域で豊富な賃貸仲介経験を積み、独立。2019年より本業。趣味はバドミントン。#グーナー。

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